2012年5月13日日曜日

デフカリオン社の実験風景と建設中の施設の写真

第三者評価を開始したニュースを流して以来、沈黙を守っているデフカリオン社が写真を公開しました。研究室での実験風景と建設中の施設の様子が写っています。

http://www.defkalion-energy.com/files/2012-05_StatusPicturesFinal.pdf

殆ど解説もなければ、実験データも公開されていないので、ここから具体的な何かを読み取ることはできないのですが、なかなか興味深い写真集です。PDFの各ページをイメージに落としたものを以下に掲載します。
最後の方に「工場の生産ライン」を企画しているかのような一文と写真があるのが意外でした。デフカリオン社はライセンスビジネスを目指しており、実際の装置の製造はライセンシーが担当するのだと思っていたからです。新たな雇用を生み出す可能性を見たギリシア政府あたりが、工場自体も運営するように頼んだとか、何か事情があるのではないかと勝手に勘ぐっています。マーケティングが開始される(とデフカリオン社が言っている)7月が来るのが楽しみです。

表紙:2012年5月の発行です。
 デフカリオン社のオフィス:ギリシアのアテネにあります。
 前書き:第三者評価と新しいテスト施設の準備状況を示すとあります。
 Team Work Briefing
 Demo Lab Set Up

 水素の注入回路
 電流の測定システム
 測定装置

 第三者による放射線計測
 第三者による熱測定
 反応装置の熱測定端子
 反応装置
 反応装置と冷却インターフェース
 反応装置を遮蔽するボックス
 第三者のガンマ線測定装置
 テスト実行中
 第三者の解析データ
 第三者の実験結果


 使用後の反応装置
 反応装置の重量測定
 ギリシャの北、Xanthiにある施設
 建設中の研究所の検証施設


 工場の生産ライン(企画中)

 研究開発室(建設中)
 デザインオフィス(準備完了)
 マネジメントオフィス(準備完了)
 購入する土地
 最後


以上

2012年5月6日日曜日

イタリアのトリノ市で開催された国際学術会議でのNANORの紹介

イタリアのトリノ市で「The Atom Unexplored」と題した国際学術会議が5月4日に開かれました。日本語に訳すと「未解明の原子の謎に挑む」みたいな感じでしょうか。
この会議、前半(午前)は常温核融合(LENR)のセッションで、後半(午後)は熱核融合のセッションという面白い構成になっています。両分野の科学者を集めての議論が起こるように意図して企画されたのでしょう。
常温核融合のセッションでは、お馴染みのMITのHagelstein博士やNickenergy社を創立したPiantelli博士の名前が挙がっています。Valerio Ciampoli氏というNichenergy社の研究者と思われる人もいるので、Nickenegy社も組織として動きだしているようです。


この会議の模様はインターネット経由でビデオ視聴できるようになっています。最近は結構色々な講演がこうやって世界中から見られるようで、(中身は分からなくとも)雰囲気だけでも味わえる便利な世の中になりました(^^;)。

誰か面白そうな所だけピックアップして教えてくれないかなぁと他力本願していたら、早速、Frank AclandさんがE-Cat Worldにレポートしてくれました。ちなみに、Frankさんは毎日のように常温核融合関連のニュースを記事にして、読みやすい英語で配信してくれています。E-Cat Worldは常温核融合ウォッチャーには欠かせないサイトです。


これによると、Hagelstein博士が発表の中で、常温核融合研究の同僚であるMitchell Swartz博士が開発したパラジウムを使った常温核融合装置NANORを紹介したそうです。Hagelstein博士によれば、パラジウム中に電流を流して過剰熱を発生させ、入力の約14倍の出力を得ているとのこと。
そして、NANORは1月以来MITで稼働を続けており、化学的に考えられる以上の発熱をし続けていると報告すると共に、一般の見学者を迎え入れたいと表明したそうです。

このNANORは今年の1月に開催された常温核融合の速習コースの中で実験に成功しており、Swartz博士のWebサイトであるCold Fusion Timesに詳しく報じられていました。

その後、Steve Krivit氏が結果に議論を呈して、反論の応酬があったりしました。最近では、4月にマサチューセッツ州の議員であるTarr氏に説明をしたというニュースもありました(Tarr氏はロッシ氏にE-Catの工場誘致を持ちかけた人物です)。
Hagelstein博士とSwartz博士はNANORの成果に自信を持っているようで、今回の一般の見学者の招待は認知拡大の大きな助けになると期待します。



以上


2012年5月5日土曜日

Brillouin Energy社:常温核融合実用化を狙う三番手

デフカリオン社へのインタビュー等を積極的に報じているPESNのSterling Allan氏がまとめた「魅力的な5つのフリーエネルギー技術」という記事があります。常温核融合は無限にエネルギーを生み出す訳ではないので、厳密にはフリーエネルギーの定義に当てはまらないと思いますが、非常に安価なエネルギーもフリーエネルギーの中に入れているようで、この記事の中には常温核融合製品もリストアップされています。

一番目には、デフカリオン社の常温核融合装置Hyperionが並びますが、実は、ロッシ氏のE-Catはこのリストには入っていません。常温核融合関連では、もう一社、Brillouin Energy Corporation(BEC社)が二番目にリストアップされています。社名の読み方は、ブリルアンエネルギー社かブリローインエネルギー社だと思われます。
どうやら、Allan氏は、BEC社の持つ技術はHyperionに次いで有望なものと見ているらしいのです。

このBrillouin社のCEOであるRobert W. George II 氏と、CTOであるRobert Godes氏への1時間半に及ぶインタビューが4月19日に掲載されたので、ザッと見てみました。
BEC社は2つのタイプのボイラー(加熱器)があると主張しています。
一つは、Brillouin New Hydrogen Boiler™ (NHB™) または "Hot Tube" と呼ばれる 400ºCから500ºCの乾き蒸気を生成するボイラーです。BEC社は、SRIと協調しながらこのボイラーの開発を進めており、発熱コストはキロワット時当たり1セントになるだろうと予想しています。発熱コアを並べた大規模なボイラーを作って、既存のエネルギープラントの中核を置き換えていくのがビジネスプランのようです。


もう一つは、既に何千時間もテストされてきたもので、Brillouin Boiler™と呼ばれます。これは、BEC社が最初に開発した湿り蒸気のボイラーで、蒸留水と電解液を使っています。このボイラーは100ºCから150ºCの熱を出力するため、家庭やビジネスの給湯・ヒーター用途を狙っているようです。プロトタイプはBEC社のバークレー研究所で継続してテストされているとのこと。

さて、面白いのは、このボイラーの動作方式です。E-CatやHyperionと同じくニッケルを使うのですが、起こる反応はE-CatやHyperionとは全く異なるようです。ニッケルと水素が融合するのではなく、ニッケルは触媒として働き、水素がヘリウムに変換される事で発熱が起こるとBEC社は主張しているのです。


理論的な説明はさっぱり理解できませんが、Robert氏は以下のように主張しています。
"A tiny amount of hydrogen protons are converted into neutrons. These newly produced neutrons are soon captured by hydrogen ions or other atoms in a metallic (e.g. nickel) lattice near to where the hydrogen ions were converted to neutrons. The captured neutrons generate heat because the new atoms that are one neutron heavier shed excess binding energy as heat to the lattice, resulting in a dramatically clean, low-cost, hi-quality heat output."
少量の水素原子が中性子へと変換される。これらの中性子は、金属格子中で近くにある水素イオンや他の原子にすぐに捕獲され、捕獲された中性子が熱を出す。なぜなら、中性子一個分だけ重い新しい原子が過剰な結合エネルギーを金属格子に熱として放出するからだ。結果として、極めてクリーンで低コストで高質の熱が出力される。

Robert氏は、「Cold Fusion(常温核融合)」という俗称やLENRという名称は相応しくないと考えており、新たに「Controlled Electron Capture Reactions (CECR)」又は 「phonon-moderated hydrogen reactions」と呼ぶべきだと主張しています。
このCECRについては、解説ビデオまで用意されているのですが、残念ながら私にはさっぱり分かりませんでした(@_@;)。

常温核融合分野の中でも目新しい理論と実験となると、信用を勝ち得るのが難しいのですが、BEC社はロスアラモス国立研究所とSRI(スタンフォード研究所)のMichael McKubre博士の2者による独立検証を行なっています。McKubre博士は常温核融合研究者の中でも著名人であり、彼が最終的にBEC社のアドバイザーボードの一員になった事実は、BEC社の主張の信頼度を高めています。

BEC社のボイラーについては、まだ第三者検証の結果も公開されていないので、どの程度のものなのか良く分かりません。しかし、先行するロッシ氏やデフカリオン社とは違う方式で「第三の競争者」として名乗りをあげてきた事で、常温核融合技術開発競争はますますホットになってきたのは確実でしょう。常温核融合は、反応のチャネルが幅広いのが非常に面白い所で、これからも新方式を引っさげた挑戦者が現れる可能性は高いのではないでしょうか。

最後にBEC社のプレゼンビデオを載せておきます。

以上