2010年5月17日月曜日

常温核融合現象が存在すると考える理由

少し前の話になりますが、Yahoo! 知恵袋に常温核融合の可能性に関する質問があがっていました。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1438466719

この回答の中に、以下のように否定的な見解がありました。

  • 常温核融合は検証実験で再現できなかったため、学術的にはお蔵入りになりました。

  • そんなものはありませんから、可能性はゼロです。当然 実用化もなにもありません。
    可能性がゼロでないなどと引っ張る人は錬金術師と同じです。

常温核融合研究の現状を調べた上で否定的な見解にたどりついたのであれば、その理由を示して貰うことで議論のしようもあります。しかし、今回に限らず、常温核融合を否定する際に、具体的な理由や根拠は殆ど挙げられていないように思います。現状を全くご存知ないまま、単なる思い込みで否定的な見解を述べておられるとしか思えないので、反論の回答を書きました。私自身の整理のためにも役立ったので、推敲・加筆して、ここにも載せます。気が向いたら随時修正するかもしれません。

常温核融合現象について
常温核融合現象が存在するのは確実です。但し、この現象を説明する理論はまだ分かっておらず、研究者毎に異なる理論の案を提示しあって議論が続いている状況です。つまり、従来の科学では説明できない現象が複数の実験で確認されていますが、その現象の背景にある仕組みは解明できていません。科学として非常に面白い段階にあると言えるでしょう。

1989年のフライシュマン博士とポンズ博士の常温核融合発見の記者発表後、実験の再現性が悪かったため、発見は間違いであったとされた期間がありました。常温核融合を否定する人の多くは、この時の報道の印象だけが脳裏に残っているのだと思います。しかし、現在に至るまでの21年間に再現性の高い様々な実験手法が考案され、数多くの追試論文が出されています。これらの実験では、常温環境で何らかの核反応が起こっていると想定せざるを得ないこと、つまり、化学反応では説明できない現象が起こっていることを証明すべく、データの収集と考察が行われています。

常温核融合現象としては例えば以下のような現象が報告されています。
  1. 過剰熱(化学反応では起こりえない量の熱発生)
  2. 核種変換(重水の電気分解でのヘリウム発生、多層膜によるCs→Pr変換など)
  3. 中性子発生(放射線検出器CR-39を使った非常に微小な中性子検出など)
これらの実験結果の報告も含め、既に多くの論文が執筆され、物理や化学の論文誌に掲載されています。常温核融合関連の資料を収集している以下のサイトのライブラリには、レポートや論文が3575本(2009年4月時点)以上収録されています。

上記の収録論文を集計した以下のレポートによると、例えば過剰熱の検出を報告した査読済論文は200本以上出ています。

また、常温核融合の研究は、世界中の複数の国々、複数の研究機関で行われています。上記のレポートによれば、LENR-CANR.orgとBritzのデータベースに収集された153本の過剰熱検出論文の著者・共著者は348名、筆頭著者の属する国は米国(19)、日本(17)、イタリア(7)、ロシア(5)、インド(5)、中国(3)となっています(括弧内は筆頭著者数)。

研究者の集う学会という面から見ると、国際会議「凝集系核科学国際会議(ICCF)」が1~2年に一度開催されており、去年はイタリアのローマで第15回目が開催されました。このローマ大会は以下のような名だたる組織が支援を行っており、常温核融合研究が有望な科学として再び認知されつつある事を印象付けました。


ENEA (イタリア新技術エネルギー環境公団)
Italian Physical Society (イタリア物理学会)
Italian Chemical Society (イタリア化学会)
National Research Council (イタリア学術研究会議)



米国化学会では、1989年の狂騒のあと常温核融合を取り上げなくなりましたが、2007年から再び常温核融合のセッションが開催されるようになりました。今年の3月に開かれたサンフランシスコ大会でも、主催者側が記者説明の場を用意した事もあり、ニュースでも取り上げられました。米国でも認知が着実に広まっていると言えるでしょう。







常温核融合現象が、従来の科学では説明できない現象である事は研究者には十分に自覚されています。2009年4月に米国CBSの"60 Minutes"というシリーズ番組で放映された"Cold Fusion is Hot Again"で登場したダンカン博士は、検出された過剰熱を化学反応起源のものかもしれない可能性を徹底的に検討して、最終的に化学反応では説明できな「過剰熱」であるとしています。


上記のような状況を見て、素人ではありますが、常温核融合現象は確実に存在すると結論付けました。要約すれば、理由は以下の3点にまとめられます。
  • それなりの件数の論文が専門学術雑誌に発表され、学会で議論されている(科学としてのレビュープロセスが実行されている)。
  • 複数の独立した研究組織が研究を行っている(単一グループの研究者の主張ではない)。
  • 第三者による実験の評価が公開されている。


参考文献など

Webで公開されていて私のような素人でも読みやすい文献としては以下があります。ご参考までに。


http://www.lenr-canr.org/acrobat/RothwellJmiraiokizu.pdf
未来を築く常温核融合
ジェト・ロスウェル(Jed Rothwell)著
2007年5月1日初版発行


http://www.lenr-canr.org/acrobat/MizunoTjyouonkaku.pdf
常温核融合プロジェクト
水野忠彦著


http://www.geocities.jp/hjrfq930/Papers/paperj/paperj03.pdf
科学する心と常温核融合現象
小島英夫著
「理大 科学フォーラム」2008.5 pp.30-37 (2008)


http://news.goo.ne.jp/article/gooeditor/life/science/gooeditor-20090518-01.html
http://news.goo.ne.jp/article/gooeditor/life/science/gooeditor-20090518-02.html
夢かオカルトか…常温核融合に捧げる人生、科学者・水野忠彦
2009年5月18日(月)

公的な機関が発行したレポートとしては、米国の国防情報局(Defense Intelligence Agency)が発行した以下があり、常温核融合を肯定的に評価しています。
http://www.lenr-canr.org/acrobat/BarnhartBtechnology.pdf
Technology Forecast: Worldwide Research on Low-Energy Nuclear Reactions Increasing and Gaining Acceptance


以上

2010年5月2日日曜日

ICCF-3 ProceedingsがLENR-CANRサイトで公開

1992年に名古屋で開かれたICCF(凝集系核科学国際会議)の第三回大会のproceedingsのPDF版がLENR-CANRのサイトからダウンロードできるようになりました。詳しくは、LENR-CANRのNewsのページを御覧下さい。
紙をスキャンして作られたため、ファイルサイズが大きくなっています。以下に二分割されて公開されていますので、ダウンロードの際にはサイズにご注意ください。

Part 1 is here: http://lenr-canr.org/acrobat/IkegamiHthirdinter.pdf (21 MB)

Part 2 is here: http://lenr-canr.org/acrobat/IkegamiHthirdintera.pdf (31 MB)

私の所からは、どちらのファイルも問題なくダウンロードできました(時間は数分かかりましたが)。常温核融合分野で重要な論文が幾つか掲載されているようですが、私には中身は良く分からないので(笑)、集合写真を眺める程度にしておきます。

以上

江里口良治博士の講座で常温核融合を題材にした宿題

Twitterでhero_21stさんに教えて貰いました。
東大の江里口良治博士の文科生向け宇宙科学の講座で、「情報のさばき方」を読んでまとめ、それに従って「常温核融合についての解説文」を書くという宿題が出たとの事。論争中の分野に関して、客観的に情報をまとめる力を養成する意図での出題だそうです。

常温核融合は、この意図にはうってつけの分野だと思います。数年後には常温核融合は非常に重要な科学技術として誰しもが認めるようになっているでしょうから(笑)、今が旬の題材ですね。

この宿題をきっかけに、常温核融合に興味を持つ若い人々が増えると嬉しいですね。

以上